メカニズム

シワができるメカニズムを知って、予防と対策を!

年を重ねるにつれて「シワ」が気になるようになった方も多いのではないでしょうか。鏡を見るたび、写真に写った自分を見るたび、「こんなところにシワなんてあったかな?」「若いときはもっと肌がふっくらしていたのに……!」などと嘆く女性は少なくないはずです。シワは顔を老けて見せてしまう厄介なもの。できる限り無くしたいと思いますよね。
この記事では、シワができるメカニズムについて詳しく解説します。メカニズムを知って、シワの予防・対策に役立てましょう。

この記事の監修ドクター

  • イデリア スキンクリニック代官山 前院長
  • 2018年6月より まみ皮膚科クリニック(水戸市) 院長
  • 日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
千葉 真美先生

■皮膚の構造を知りましょう

まずは、肌がどのようになるとシワを作り出すのかを理解するため、皮膚の構造を知っておきましょう。
皮膚は、大きく「表皮」「真皮」に分けることができ、表面を覆う薄い膜が表皮、より皮下組織に近い部分が真皮となっています。二層構造になってはいるものの、その厚さはわずか0.4~1.5mm程度です。そのため、皮膚は強くこするなどの刺激にとても弱いのです。
表皮はさらに、外側から「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4つの層から形成されています。そして、真皮の中には、「繊維芽細胞」という肌にとって非常に重要な役割を果たす細胞が点在しています。
表皮と真皮ごとに、その構造を分解してみましょう。

■<表皮>の構造

表皮を構成する層のうち、最も外側に位置し、皮膚を守るバリア機能としての役割を果たすのが角質層です。チリやホコリ、雑菌などを体内に入れないように守る働きはもちろん、体内の水分が蒸発しないようにフタをする働きもある大切な層です。
角質層は角質細胞がレンガのように積み重なってできており、角質細胞同士を接着する細胞間脂質(セラミドなど)が支えています。古くなった角質は一定期間のサイクルを経て剥がれ落ちる、いわゆる「ターンオーバー」を繰り返しています。
最も真皮に近い基底層では、新しい肌の細胞を作っています。この新しい細胞を「基底細胞」と呼び、有棘層、顆粒層を経て、角質層へ押し上げられる仕組みになっています。なお、シミの原因となるメラニン色素を作る「メラノサイト」も、基底層に存在しています。
また、表皮のさらに外側を覆う皮脂膜も大切です。皮脂腺から分泌される皮脂は余計なものと考えられがちですが、実は表皮からの水分の蒸発を防ぐ天然のクリームの役割を果たしています。

■<真皮>の構造

真皮は、表皮に栄養や水分を与え、表皮を下から支える重要な役割を果たしています。真皮の中に含まれる繊維芽細胞には、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を産生し、同時に古くなったこれらの成分を分解処理する働きがあります。
真皮の構成要素であるコラーゲンエラスチンヒアルロン酸は、美肌を作る重要なものです。コラーゲンは網目状になっており、その間をエラスチンとヒアルロン酸が埋めるようにして存在しています。これらは相互に作用し合い、いずれかが減少するとそのバランスが崩れ、表皮を支える力が弱くなってしまいます。
また、老化や紫外線により繊維芽細胞が弱ってしまうと、真皮の構成要素がうまく産生されなくなり、ハリのある肌が維持できなくなってしまいます。

■シワの種類によって原因や特徴が異なる

シワは、その原因や特徴によってさまざまなタイプがあります。
まず「表情ジワ」から解説しましょう。表情ジワとは、笑ったり驚いたり、表情を作ったときに現れるシワです。
若いときは表情を作ったときにだけシワが生じ、表情を戻すとすぐに元の状態に戻りますが、年を重ねると徐々に戻りづらくなり、無表情のときもシワが刻まれたまま残ってしまいます。目尻、眉間、額、ほうれい線などに多くみられます。
続いて「乾燥ジワ」は、その名のとおり皮膚が乾燥することによって引き起こされるシワですが、さらに表皮性のシワと、真皮性のシワに分けることができます。
表皮性のシワは、角質層の水分量が減ってしまうことで起こります。浅く細かいのが特徴で、見た目が縮んだようにも見えることから「ちりめんジワ」とも呼ばれます。乾燥しやすい目の周り、口の周り、額などによく見られます。
一方真皮性のシワは、真皮まで達する深いシワです。目尻や額などにできやすく、真皮の中のうるおいを保つコラーゲンやエラスチンが減少していることが影響しています。

■シワはなぜできるのか

シワの原因は、乾燥、紫外線、表情癖、老化などさまざまです。先述したように乾燥は乾燥ジワを引き起こしますが、表皮が乾燥する原因と真皮が乾燥する原因は少し異なります。
表皮は、細胞間脂質であるセラミドなどの不足が起こり、保水力が低下していることが影響しています。間違った洗顔方法などにより表皮の水分や皮脂の量が低下すると、角質細胞が増殖し、ターンオーバーの乱れを招きます。すると、角質層のキメが乱れ、角質間に隙間ができ、乾燥が進みます。
真皮の乾燥は、基本的には表皮の乾燥が進んだ末に起こりますが、その主な原因は紫外線です。紫外線を浴びて体内に活性酸素が発生すると、コラーゲンの繊維が切れる、繊維芽細胞からコラーゲンの分解酵素が放出されるなどの弊害が現れます。それによって真皮の弾力が失われ、シワができてしまうという結果になるのです。
また、紫外線はシワの大敵であるだけでなく、肌の老化そのものの原因でもあります。そのため、シワだけでなくシミやたるみが気になる方も、紫外線には十分注意する必要があります。
また、表情ジワの大きな原因は表情癖です。目をしかめる癖がある、パソコンやスマートフォンに向かう時間が長いといった人は、眉間にシワができやすく、上目遣いをする人は額にシワができやすくなっています。

■シワの予防と対策

シワを予防するには、皮脂を取り過ぎないこと、紫外線を避け、乾燥を防ぐこと、また表情癖があることを自覚し、癖になっている表情を控えることなどが挙げられます。すでにできてしまったシワに対しては、そのシワのタイプを見極め、対策を講じる必要があります。
特に紫外線はできる限り避けましょう。紫外線の恐ろしいところは、20代に浴びたダメージも肌が記憶しており、年齢を重ねたときに真皮性のシワとなって現れるところです。
夏以外の季節も、日傘や帽子、日焼け止めを活用するなど、紫外線ケアをおこないましょう。浴びてしまった紫外線に対しては、活性酸素の発生を防ぐため、抗酸化作用のある化粧品を使用して対策することも有効と考えられます。
皮膚の構造を知るとわかるように、表皮の乾燥を防ぐにはセラミドなど、真皮の乾燥を防ぐにはコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を補うことが重要です。これらが含まれるスキンケア用品を選ぶことも、それぞれのシワ対策として良い方法だといえます。
他に、古い角質を取り除き、コラーゲンの生成を促すケミカルピーリング、皮下にヒアルロン酸を注入する治療など、クリニックで施術を受けることも、シワを解消するひとつの方法です。

■おわりに

いかがでしたでしょうか。皮膚の構造、シワの原因、そのメカニズムを知ることで、必要な対策が理解できたのではないでしょうか。
表情ジワが目立つ方は、表情癖を自覚し、シワを作ると考えられる表情をなるべく控えることを意識しましょう。乾燥によるシワが目立つ方は、乾燥や紫外線を避け、肌の老化をできる限り遅れさせること、有効なスキンケア成分が含まれる化粧品を使用することなどが重要です。
特に紫外線は、皮膚の乾燥を促すだけでなく、真皮で生成される美肌成分にも大きな影響を与えます。日頃から日傘や帽子、日焼け止めを活用し、紫外線対策をおこないましょう。
シワのメカニズムを知って、適切な対策をとっていきましょう!

あわせて読みたい

シワは年齢によるものとは知っていても、なぜ年齢を重ねたらシワになるのかはご存じない方もいるでしょう。ここでは、いくつかあるシワの種類や、それらが引き起こされる原因を探っていきます。