気になり始めたたるみを切らずに治す、注射によるたるみ治療とは

顔のたるみを美容医療で治す方法は、手術によって皮膚のたるみを引き上げる「フェイスリフト」と呼ばれる手法が一般的にはよく知られていました。しかし、フェイスリフトは術後のお顔が元の顔立ちから大きく変わってしまうことや、ダウンタイム(手術から元の生活に戻れるまでの期間)が長いこと、そして多額の治療費を要する点がデメリットでした。そこで最近では、フェイスリフトが必要なレベルには及ばない軽度のたるみなら、注射による治療で治すという選択をする方が増えています。顔立ちも大幅に変わることなく、治療から帰宅してすぐに日常生活へ戻れる点が、注射によるたるみ治療の主なメリット。費用も注射1本あたり数万円ほどと、手術と比較するとかなりリーズナブルです。
この記事では、切らずに治す注射によるたるみ治療について、メリット・デメリットや治療に向く部位などを詳しくご紹介します。

この記事の監修ドクター

  • イデリア スキンクリニック代官山 前院長
  • 2018年6月より まみ皮膚科クリニック(水戸市) 院長
  • 日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
千葉 真美先生

■注射によるたるみ治療の種類をご紹介

注射でたるみを治す方法にも、使用する薬剤や適した部位などによっていくつかの種類があります。ここでは、たるみを治せる注射の種類についてご紹介します。

【1.ヒアルロン酸注入】
皮膚の下に、人体に元々存在する保水成分であるヒアルロン酸を注射し、皮膚を盛り上げてたるみを解消する治療法です。目の下・ほうれい線などの気になるシワに直接注入し、シワを消す事も可能ですが、近年は、ヒアルロン酸で緩んだ靭帯を支えたり、下がった頬を持ち上げたりするなど、リフトアップの手段としても用いられています。

【2.脂肪溶解注射】
薬剤を注射して顔の皮下脂肪組織を分解し、脂肪細胞の数そのものを減少させることで脂肪による肌のたるみを改善します。ブルドッグのように見える頬のたるみや二重あご、フェイスラインのぼやけなど筋肉の加齢による衰えが原因で起こるたるみに適しています。加齢で顔が痩せてしまったことで皮膚がたるみ、老け顔に見えている場合にはあまり向かないため注意が必要です。

【3. 多血小板血漿(PRP)】
血小板を豊富に含んだ血漿を注射し、細胞を活性化させて皮膚の再生を促進させることで肌を生まれ変わらせ、たるみやシワを解消して肌を若返らせる治療法です。自分の体内にある血小板を使用するためアレルギーを起こす心配がありませんし、血小板が持つ成長因子によって肌を若返らせる効果が得られるため、元の顔立ちのままたるみを治すことができます。ただし即効性がなく(効き目の実感は治療から1~2か月後が目安)効能に多少の個人差が見られる点や、注射での治療法のなかでは比較的費用が高額になるなどのデメリットもあります。

■注射によるたるみ治療のメリット・デメリット

メリットがクローズアップされることの多い注射によるたるみ治療ですが、デメリットもあるため治療を検討している方はあらかじめメリット・デメリットの両方を知っておきましょう。ここでは、注射でたるみを治療する際のメリット・デメリットについてご紹介します。

【注射でたるみを治すメリット】 1.ダウンタイムがほぼなく、治療後すぐにメイクや洗顔ができて(針を刺した部分は、当日だけメイクを避ける)家事や仕事にもすぐ復帰できます。

2.治療費はヒアルロン酸注射の場合で1本4~6万円ほどで、手術などと比較するとリーズナブルです。

3.メスで顔を切らないため、痛みや身体へのダメージは手術と比較してかなり抑えられます。

4.元の顔立ちを変えずにたるみだけを改善できるため、仕上がりがナチュラルです。

【注射でたるみを治すデメリット】
1. 未熟な医師による治療で、皮膚の重要な血管の塞栓が起こり、最悪の場合皮膚の壊死や失明などが起こる可能性があります。また、注入部位を誤って不自然な仕上がりになったという事例も報告されています。

2.永久に効果が持続するわけではなく、注射の種類によって異なりますが数か月~1年ほどのサイクルで定期的に施術を受ける必要があります。ただし「脂肪溶解注射」に限っては、脂肪細胞の数を減らしてしまうため時間が経っても元の状態には戻りにくく、失敗は避けなければならないため治療も慎重に検討する必要があります。

3.注射に伴って麻酔が必要となる場合は、麻酔の料金が加算される場合があります。

4.ヒアルロン酸注入に慣れてくると、細かいシワまでも改善させようと多量のヒアルロン酸を注入し、頬がパンパンに腫れたような不自然な顔(いわゆるヒアル顔と呼ばれているもの)になってしまうケースもWeb上で取り上げられています。
鏡を見て気になる部分すべてを何とかしようという思いが強くなりすぎることで、全体としては十分改善できている様子が確認できず、必要以上に注入を繰り返すケースがあります。
信頼できる医師へ相談することはもちろんのことですが、医師やスタッフも実際にヒアルロン酸注入を受けていると聞いた場合には、ご自分が理想とするナチュラルな仕上がりかどうかもチェックするとよいでしょう。

■たるみを注射で治すときの注意点

注射でたるみを治療する場合、ご自身でも気をつける点が治療の前後にあります。ここでは、注射でのたるみ治療を受ける際の注意点についてご紹介します。

【1.内出血などが起こる可能性】
注射は針で薬剤を注入しますから、治療中血管に針が触れてしまった場合には軽い内出血を起こしてしまうことがあります。ただしほとんどの内出血は自然に治癒し、1~2週間ほどで回復します。

【2.目の周りの注射はまぶたが腫れることも】
目の周囲にヒアルロン酸を注射した場合、半月~1か月ほどはヒアルロン酸が周りの水分を吸収しますからまぶたの重さや腫れを感じる場合があります。ただしこの症状も、ヒアルロン酸が皮膚と馴染むことで改善します。

【3.たかが注射と安易に考えず、経験や実績が豊富な医師に依頼すること】
注射するだけだから難しい治療ではないと、安易に考えてしまうことは禁物です。注射の場合も、さまざまな治療に携わって知識と経験を積んできた腕の良い医師の治療を受けることが何より大切。料金が安いからと選んだら、治療後のフォローがまったくなく苦労したという事例もあります。価格だけで判断せず、使用している薬剤の種類や、治療前から治療後までのアフターケアがしっかりしているクリニックを選択するようにしましょう。

【4.既往症や治療中の疾患によっては治療を受けられないことも】
注射でたるみを治すことは美容目的とはいえ、医療によって症状を改善する行為ですから必ず禁忌事項があります。既往症(何らかの病気に罹患した経験)やアレルギーの程度、妊娠・授乳の有無などで治療を受けられなくなるケースがありますから、事前のカウンセリング時に必ず確かめておきましょう。

【5.ヒアルロン酸注入後の修正~再治療には期間が必要】
ヒアルロン酸注入は美容医療のなかでは珍しく「仕上がりに満足できなければある程度修正が可能」というメリットがありますが、ヒアルロン酸を分解する注射で元に戻す修正を行った場合、治療をやり直すまでにはひと月ほど期間を空ける必要があります。ヒアルロン酸分解注射を打った直後に再治療をしてしまうと、新たに注入したヒアルロン酸も分解されてしまうことがありますから注意しましょう。

■美容鍼の気になる痛みや安全性について

この記事では、さまざまな方法がある注射でのたるみ治療についてご紹介しました。現在、注射でできる美容医療のなかでは「ヒアルロン酸注入」が最も人気です。費用が比較的リーズナブルで自然に仕上がり、副作用も少なく繊細な治療ができる点が多くの方から支持されるポイントでしょう。
しかし、どのような治療法であっても慎重に検討した上、クリニックでのカウンセリングもしっかり行って治療を決めましょう。お顔を治療するということは、それだけで勇気が必要なものです。また治療は予算だけで選ばず、クリニックや医師の信頼度や知識・経験も考慮して選択することが何より大切。それに、治療後はいつもと変わらない生活ができるとはいえ、治療部位によっては多少の禁忌が発生することもあります。ご自分のスケジュールとよく照らし合わせ、支障のない時期に治療を受けるようにしましょう。

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