むくみが原因のたるみには、どんなケアがおすすめ?

男性よりも冷えや血行不良を起こしやすいといわれる女性の、代表的なお悩みの1つとして「むくみ」が挙げられます。脚や顔の「むくみ」に、日々悩まされているという方も多いでしょう。
実は、フェイスラインなどのたるみにも、「むくみ」が深くかかわっていることをご存じでしょうか。この記事では、「むくみ」が引き起こす肌のたるみとそのケア方法について、詳しくご紹介します。

この記事の監修ドクター

  • イデリア スキンクリニック代官山 前院長
  • 2018年6月より まみ皮膚科クリニック(水戸市) 院長
  • 日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
千葉 真美先生

■むくみはどんな状態を指し、どうして起きるのか

長時間立ちっぱなしでいた翌日などに、脚がパンパンになって重く感じることがあります。そんなときには「疲れで脚がむくんでしまった…」と思うはず。これと同じ状態が顔にも起これば、「顔のむくみ」となります。
脚や顔をパンパンにする「むくみ」は、体内の水分によって引き起こされます。人間の身体の約6割は水分から成るとされ、血液やリンパ液もそれに含まれます。血液と同様にリンパ液も体内をめぐっていますが、疲れやストレスなどの影響によってリンパ液の流れが阻害されやすくなることがあります。めぐりが悪くなったリンパ液は順調に代謝されず皮膚のすぐ下の部分に溜まるため、あのどんより張った感覚の「むくみ」を作り出してしまいます。
ところで、脚がむくみやすくなるのは、立っているときに水分が重力で下に溜まっていくからであることが分かります。しかし、身体の中でも上の方にあるはずの顔がなぜむくみがちになるのでしょうか。
実は、眠っている時間には老廃物となった水分が顔を含めた体中に溜まってしまうのです。そのため、翌朝の顔のむくみが起こるというわけです。朝起きたときの顔のむくみが、立って活動しているうちに午後までには引いていくことには、そのような理由があったのですね。

■むくみを繰り返していると、たるみへと変化してしまう

顔にむくみを感じる時間帯は、朝からおよそ半日であると分かりました。「半日でむくみが引くのであれば、あまり悩む必要はない」と思ってしまいそうですが、放っておくとあとでお悩みの種になってしまうかもしれません。
何日も顔がむくんだ状態になることを繰り返してしまえば、皮膚でもむくみで張った状態が癖になってしまいます。やがて皮膚が伸びきってしまうことで下へと垂れ下がり、目元やフェイスラインのたるみに変わってしまうと考えると、むくみは思った以上に恐いものであることが分かります。
また、代謝されなかった老廃物が皮膚の下に溜まった状態を続けること自体も、肌にはあまり良くありません。老廃物が溜まりっぱなしになることで、皮膚そのもののおとろえも加速してしまうといわれていますから、やはりむくみはなるべく避けるようにしましょう。

■むくみは何が原因で起こる?

顔などのむくみが起こる原因として、さまざまな要素が挙げられます。ここでは、むくみの主要な原因についてご紹介しましょう。

1.運動不足
デスクワークなどが多く身体を動かす習慣が少ないと、全身の筋力が低下しやすくなります。筋力が下がると、体内の血液やリンパ液のめぐりも良くなくなり、代謝の低下につながります。リンパ液がうまく代謝されなくなることで皮下に溜まり、むくみとなりやすくなるのです。

2.寝不足
寝不足になると体内の酸素が不足してしまい、身体は血液の循環を促すために血液量を増やします。そのため、血液から生み出された老廃物が皮下に溜まることで、むくみを起こしやすくなってしまいます。

3.冷え
身体を冷やすことで、血液やリンパ液のめぐりが悪くなってしまいます。リンパ液から変化した老廃物にあたる水分が多く皮下に溜まりやすくなり、むくみにつながります。特に女性は筋肉量が少ないこともあり、もともと血行不良を起こしやすいためむくむことが多いとされています。

4.ホルモンバランスの乱れ
女性の場合、生理の前や生理初期はむくみがちになるものです。女性ホルモンの影響で、生理前は体内のさまざまなものの排出が抑えられるため、その影響を受けて老廃物の代謝も滞りやすくなります。したがって、この時期のむくみはある程度仕方ないため、あまり神経質に考えすぎないほうがよいようです。

5.お酒の飲みすぎ
アルコールを多く摂った翌日は、顔のむくみがひどいと感じたことがある方もいるかもしれません。お酒を多量に飲むことで、アルコールが持つ血液に含まれる水分を血管から排出させるはたらきによって血液外の水分が増え、老廃物を溜めやすくなってしまいます。そのうえ、血管が脱水を起こすことを避けようと身体はどんどん水分を体内に取り込もうとするため、さらに「むくみの悪循環」が起こってしまうことになります。

6.塩分の摂りすぎ
塩分も摂りすぎればアルコールと同様に、血管内の脱水を引き起こしてしまいます。そのため、アルコールを摂りすぎてしまったときと同様に「むくみの悪循環」が起こりやすくなります。塩分を多く摂ったときに喉が渇くと感じることが多いでしょうが、そのときに摂った多量の水分がそのままむくみになってしまうと考えると恐いですね。

7.寝る前の水分の摂りすぎ
水分は積極的に摂るべきものですが、寝る前など夜間にはあまり摂り過ぎない方がよいでしょう。眠っている間にリンパ液が代謝されにくくなり、水分を摂ったことで増えた体内の水分が老廃物となってむくみを起こしてしまいます。

■日常生活でむくみを防ぎ、たるみ対策を

むくみを日常的に繰り返すと、皮膚のたるみを引き起こしかねないことは先に述べました。以下にご紹介する方法にしたがって生活の中でむくみを予防し、間接的なたるみ防止につなげましょう。

1.塩分は控えめに
塩分多めの食生活を続けていると、むくみが恒常化してたるみや老化につながります。ラーメンのスープを飲み干さない、料理の味付けにスパイスや酢を活用して減塩を試みるなど、塩分を控えめにする生活をコツコツ続けてみましょう。ちなみに、成人女性の1日あたりの適正な塩分摂取量は8g程度とされていますから、目安としてみてください。

2.野菜・海藻・豆・フルーツを摂る
野菜や海藻、豆類や果物には塩分に含まれるナトリウムを排出する成分であるカリウムが多く含まれます。減塩と同時に、意識的によく摂るようにするとよいでしょう。

3.静止時も、ストレッチなどで定期的に身体を動かす
「運動不足」と聞くと、何かスポーツなどをしなければならないのかと思いがちですが、日常生活で軽く身体を動かすことでもむくみは予防できます。デスクワークの途中など、1時間に1度は立ち上がって歩いたり、肩を回したりストレッチを行ったりして代謝を下げないよう努めましょう。立ち上がれないときは、席を立たなくてもできるストレッチなどを休憩時間に行うだけでも効果的です。むくみに効果的なツボを刺激するマッサージなどを加えても良いでしょう。

■むくみは美容クリニックで治せる?

むくみは体内で起こることのため、外側から治療するイメージのある美容クリニックでは治せないのでは?と思いがちです。しかし、美容医療の世界でもむくみ解消のための治療は行われています。
「BNLS」と呼ばれる注射による治療法があり、手術を伴わずにリンパの循環促進・たるみ部分の脂肪分解・皮膚の引き締めの3つの効果が得られます。脚などのむくみもこの方法で治療可能ですが、主に「小顔注射」と呼ばれ、顔への治療が知られています。
ただし、個人によっては効果があらわれにくい場合や、1回だけでは満足な効果が見込めず複数回の治療が必要となるケースもあります。まずは医師によく相談し、適切な治療法を検討することがおすすめです。

■おわりに

この記事では、たるみを引き起こす「むくみ」の詳しい説明と原因・対策についてご紹介しました。
一時的に水分が溜まるだけだと思っていたむくみが、まさかたるみに変わってしまうことがあるとは…と、驚いた方も多いはずです。日常生活の改善とともに、習慣化してしまったむくみがあるなら、美容クリニックで医師に相談して治療を検討する方法も一案でしょう。

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